西粟倉村には現在3つの小水力発電所があります。
その中でも大きな発電量を誇るのは第1発電所、通称「めぐみ」です。
西粟倉村はめぐみで発電した電力を中国電力に売電し、そこで得た収入があるおかげで森林やバイオマスに関する事業等への投資ができるようになっています。
そして、このめぐみに次いで来春に稼働を予定している第2発電所。
現在、この第2発電所の愛称を募集しています。
その建設と愛称募集に際して、この事業の担当者である西粟倉村役場産業観光課の白籏佳三(しらはた けいぞう)さんに話を聞きました。
―まずそもそもの水力発電について少し解説いただけますでしょうか
白籏さん(以下敬称略))はい。水力発電は再生可能エネルギー(※1)の1つです。
日本は昔から電気が届いていない奥地では水を使って発電しており、歴史の有る再生可能エネルギーです。
再生可能エネルギーといえばイメージされるのに太陽光がありますが、太陽光発電は場所を選ばず、簡単に設置ができメンテナンスにもあまり手がかかりません。
ただ、うちの村は中国山地に位置しており、特に冬季は日照時間が少なく降雪もあるため、大規模にやるには晴れの国岡山であっても若干効率がよくありません。
水力発電の出力は、水の落ちる落差と水量で決まりますが、西粟倉は中国山地に位置し、高低差が大きな地形、つまり水の落差も大きいということです。
且つ年間通して降水量が多く安定的に水量が確保できる地域なため、水力発電はとても適しています。
ちなみに水量や水の落差、その特長に合わせた水車を活用して発電しています。
めぐみはフランス水車というものを使っていて、これは中規模から大規模な水量に向いていて、最も広く用いられている水車です。
今回新たに出来る第2発電所は落差が大きいものに向いているターゴ水車を採用しています。
―なるほど。水力発電に適した土地ということは昔から水力発電は取り組んでいたのですか?
白籏)第一発電所は昭和41年3月に稼働スタートしています。
この頃は2年前の昭和39年にオリンピックが開催されたまさに戦後復興の時代、多くの人が国を豊かにすることを目標に一丸となって力を注いでいた時代です。
そして都市部だけでなく農山漁村に電気を導入し、農林漁業の生産力や生活の豊かさを上げる為に「農山漁村電気導入推進法が作られて、全国に小さな発電所を生み出そうという動きが起こり、その流れに乗って第一発電所が建設されることになります。
建設費用は約8,000万かかったとされています。これは今で換算すると約5億。大きな出資です。農山漁村電気導入推進法があることで国から無利子で2/3借りることが出来ていたとは言え、1/3は山の木を売って得たお金を当てたと記録にあります。
約2年 の工事を経て、昭和41年に完成し稼働した、第一発電所。
このめぐみは発電出力最大290kw、年間発電量は約2,00,000kwhです。
量で言うとピンとこないかもしれませんが、この発電量を売電すると村への収入は年間約6,500万円です。一般家庭に換算すると約400軒分に相当します。
木を売ったお金で出来た水力発電所。その発電所が生み出した電力を売って得た予算は、林業やバイオマスの投資に回すことが出来、村の発展を支えています。
今も発電所の建屋の前には、発電所が竣工時に建てられた石碑があり、ここには「難工事だったがようやく出来る」ということや「これによって故郷の生活が潤ってほしい」ということが書いてあります。
それを読むと胸が熱くなりますね。
―これは熱くなりますね。第一発電所から加えて2つの発電所が生まれ、来年からは4台になるのですね。
その経緯を聞かせてもらえますでしょうか。
白籏)めぐみの他2つは、あわくらんど駐車場前にある5キロと、若杉駐車場にある1キロです。それぞれキロ数は少ないですが、導入した理由としては、村内で水力発電の可能性研究のためや、災害時電源の確保、若杉駐車場は電源のない所だったこともあり導入しました。
この2つは意味のあるものですが、めぐみに続くようなしっかりと電力確保できる場所にチャレンジしたい、そして自然の恩恵を受けた再生可能エネルギーで村を豊かにしたいと思い、第2発電所の検討を2012年から始めました。
それから全国小水力利用推進協議会の協力も得て実現可能性を模索し、今の場所に行き着きました。
かつ発電所が稼働出来れば村への売電による収入4500万/年になることも試算されて、さあやろうとなります。
ところが、これまで売電していた中国電力が、新たに電力を買うとなると送電線の枠が足りず、容量を大きくする工事が必要で、その工事費用は予算と採算に合わないものでした。
FIT法(※2)は再生可能エネルギーを支えていますが、一方でこれが試行されたことで再生可能エネルギーに取り組む事業者も増え、容量が足りなくなっていたのです。
それほどの予算は用意出来ないのでどうしたらいいか悩みながら、でもなんとかしたいと模索を続けていました。
ここでFIT法の改正により、平成29年3月31日までに系統の接続契約ができない設備(太陽光など未稼働案件)は、FIT認定が失効するといったFIT認定期限が設けられました。
その期限を迎えて、もしかしたら送電線の枠が空いたのではないか、、そんな望みもかけて再度中国電力に相談すると、空き容量が出る可能性もあるということで、協議を続け平成30年に8月21日に枠がキープできました。
そこから工事に着工したのが平成31年3月。
そこからようやく今、2年半で完成します。
-そういう経緯があったのですね。企画段階からだと8年 ですね。そこは何か執念のようなものも感じます。
白籏)そうですね、それがないと出来なかったと思います。笑
-最後に、今回愛称を募集するにあたっての想いがあれば教えて下さい。
白籏)第一発電所に愛称を付けたいと思ったのは、これまでもそうだったように、これからも村を支える存在であることを広く認知してほしかったことがあります。
そこで、当時西粟倉小学校6年生が提案してくれた「めぐみ」が愛称となり、その名の通り西粟倉に恵みを与えてくれる働き者です。
今回も、第2発電所が稼働するにあたって、めぐみに続き、村の人々から愛され村を支える存在として活躍してもらいたく愛称を募集します。
第2発電所は大きな発電量を発電できるので、めぐみと一緒になって村を支える頼もしい存在になってほしいと思っています。
是非、沢山の方に長く愛される愛称を考えてほしいと思います。
愛称募集は、愛称だけでなくそう名付けた背景を聞かせてもらえることも楽しみにしています。愛称アイデアとその理由を含めて選ぶことになります。
沢山のご応募お待ちしております。
-ありがとうございました。是非皆さんも愛称を考えてくださいね。
ご応募は以下のボタンからお願いします。
※1 再生可能エネルギーの定義
エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(エネルギー供給構造高度化法)においては、「再生可能エネルギー源」について、「太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの」と定義されており、政令において、太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱その他の自然界に存する熱・バイオマスが定められています。
参考:経済産業省 資源エネルギー庁WEBサイト
※2 FIT法
「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(通称FIT法)」は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。電力会社が買い取る費用の一部を電気をご利用の皆様から賦課金という形で集め、今はまだコストの高い再生可能エネルギーの導入を支えていきます。この制度により、発電設備の高い建設コストも回収の見通しが立ちやすくなり、より普及が進みます。
参考:経済産業省 資源エネルギー庁WEBサイト