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目次
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特集 伝統を継ぐ
ー 伝統を繋ぐ ー
秋といえば、西粟倉村では豊作を祝う秋季大祭が行われる季節です。浦安の舞の練習が始まったり、獅子舞の笛の音色が聞こえてくると秋が来たなと感じる人も多いのではないでしょうか。
西粟倉村無形文化財に指定されている粟倉神社の獅子舞。宝暦8年から約260年余り経った現在でも、その舞の迫力は変わることなく守り継がれています。今回は粟倉神社獅子舞保存会会長の林敬庸さんを筆頭に地域文化の継承についての想いや獅子舞の魅力について教えて頂きました。
ー きついけど おもしろい ー
粟倉神社獅子舞保存会のメンバーは現在20名。会長の林さんが最年長で、20代半ばのメンバーが最年少です。毎年の練習開始は8月の終わり頃、週に3回、夜7時から中土居公民館に集まります。10月本番直前の9月終わり頃からは平日、毎日集まって完成度を高めていきます。今回獅子頭を被られるのは、河野さんと重軒さん。若手の二人に決まった理由を聞くと、両者とも立候補されたそう。その理由と意気込みをお聞きしました。
河野さん 神楽をしっかり舞って自分できちんと覚えて次の世代に伝えていけるようにと思いました。低い体勢で舞うのが基本でしんどいですが、より格好良く、見栄え良く見せられるように、徐々に身体を慣らしながら練習をしています。今はなかなか難しいですが、お客さんの前で披露したときの拍手が励みになります。
重軒さん 保存会のメンバーになって3年程ですが、まだ一度も舞ったことがなかったのでやってみたいと思い立候補しました。自分の地元とは違う風習ですし、伝統文化をやらせてもらえておもしろいです。初めてなのでミスのないように努めたいです。
なかなか村民の方の前で舞を披露する機会が無く、とても残念な状況ではありますが、お祭りが自粛されつつある中で、回らせていただいた際には村民の方に楽しんでいただきたいと保存会の方は言われています。
ー みんなで守り繋げる ー
みなさん続々と笛を片手に集まってくると、練習が始まります。舞う人を中心に他のメンバーは、みんな太鼓や笛で必ず伴奏に参加します。演目にもよりますが、今回取材時に練習されていた拝殿神楽は、1回が約20分の舞です。獅子頭の重さは約7.5㌔。両手には御幣と鈴を持ち、腕は常に頭より上をキープ、胸を張り、前半は基本中腰という、見るからにきつそうな体勢で、後半になるとより激しい動きが加わり、1回でへとへととなってしまう程ハードです。そんな動きや移動も複雑そうな舞に決まった指導者はいません。
そのことについて林さんは、「保存会に入っていきなり舞をすることなく、最初はだいたい笛や太鼓から。そして獅子のけつ持ちをして2~3年すると自然とだいたい動きをみて覚えているので、誰かがつきっきりで指導することはあまりないです。」
その言葉通り、気づいたことや、気をつけるポイントがあれば、周りのみなさんがそれぞれにアドバイスを送ります。自分が1度経験しているからこそ分かるきつさ。その中でも気を付けるポイント。それを次に伝え残していく。そして、その様子を保存会に入ったばかりのメンバーが見て知って覚えていく。そのサイクルが自然と生まれていて、みんなで獅子舞をより良く、守り繋げていこうとする様子が目に見えて分かる練習風景でした。
ー 獅子舞のみどころは「全部」 ー
みんなで地域の伝統を継承していく、その想いがそれぞれにきちんと芽生えている獅子舞保存会のみなさん。神楽を通じて次の時代に繋げていく意義について会長の林さんに教えていただきました。
林さん(以下林)粟倉神社の獅子舞を自分も子どもころからずっと見ていました。それを若い頃に近くのおっちゃん達に誘われて、獅子舞の練習に何の迷いもなく入る、それが当たり前の環境でした。もちろん最初は何も分からないですが、自分が教えてもらったり、実際に1回舞ってみるとすごい歴史があることをやっているんだなという実感が湧く。それを毎年続けていくと年に一度の楽しみになってくるんです。実際、獅子舞をするということがとっても楽しいです。だから続けられています。今は教える立場になって次へ繋いでいっていますが、口伝えだけで260年も伝承され続けれる舞が当時はどういう想いでやられていたか考えますね。そういうところも魅力だと思います。
獅子舞のみどころは?
林 そりゃもう全部ですね。すごく古い昔のものを今みてもきっと同じことをやっているということ。笛を吹く人がいて、太鼓がいて、みんながいないと成り立たないんですから。全員がいるからこのひとつの獅子舞ができているというところです。
今後はどうなってほしいですか?
林 今後どこかで人数が少なくなってしまったり、そういう時には粟倉神社の氏子だけでなく、外に目を向ける取組をしないといけなと思っています。保存会のみんなにはメンバーとして、獅子舞の舞い方だけでなく、祭りが何のために行われているか、どんな文化があって歴史があるのか、それを説明できるようになって次へ伝えていってほしいです。それが文化が繋がっていくことだと思っています。
子どもの頃からみんなが文化を感じ、伝統を繋げることを自然に考え、それが毎年の楽しみになる。
林さんの言われていたこの貴重な「当たり前の環境」は、きっと260年前から変わらず、守り繋がれてきたのだろうと感じました。そしてその想いは現在もこの先も変わらず続いていくでしょう。
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