【百年の森林を学ぶ~特別編~】白い炎!?土殺し!?登り窯で生まれる自分だけの陶器づくり[後編]

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西粟倉村には、自分でろくろを回して土を形作り、そして”登り窯”という窯で焼く体験までできる、とても素晴らしい工房があります。

「若杉窯 ギャラリー若杉」

2回にわたりお届けする、若杉窯で体験し、学ぶ、陶器づくりの様子のレポート。
今回は後編です。いよいよ登り窯で焼き、陶器が完成します!

★前編をまだ読まれていない方は、まずはこちらからどうぞ

年に一度のその時に向けて

登り窯で陶器を焼く工程は、年に一度、10月に、4日間(!)にわたって行われます。
さて、陶器を窯で焼くためには、何が必要でしょうか?

“火”です。
では火を作るためには、何が必要でしょうか?

そうです、”薪”です。
年に一度のその時に向けた準備は、薪を大量に揃えるところから始まります。
薪の生まれは、もちろん西粟倉の森林。
村が育んできた森林のエネルギーが、陶器たちへとつながっていくのです。

ちなみに、若杉窯では、集めた薪は、なんと、登り窯を設置した建屋の壁として積み上げられます。(作業時に取り出しやすく、効率的!)

<壁となってその時を待つ薪たち>

一方、体験者が形作った陶器の方も、次段階の工程として色付けが進められます。
体験者の希望あるいはお任せで、黒・白マット等々、様々な色合いを決め、宮崎先生が焼き上がり時の姿をイメージしながら釉薬を塗っていきます。

<どんな色の仕上がりになるかな?>

登り窯、現る

ここで、いよいよ登り窯について、紹介します。
登り窯は、斜面となった地形に、陶器を焼く部屋が複数連なって階段状に登っていく形が特徴的な窯です。
中国・朝鮮半島を経て、16世紀後半に日本に導入され、江戸時代に全国に普及したと言われています。
(宮崎先生は、この窯自体を、15年ほど前にご友人たちと1つ1つ煉瓦を積み上げながら作り上げられた!のですが、その時の盛りだくさんのエピソードは、ぜひ体験時に宮崎先生から直接聞いてみてください♪)

<若杉窯の登り窯>

この若杉窯の登り窯では、陶器を焼く部屋が3つあります。
基本的には、一番手前の部屋の前面(1枚めの写真の左下)から薪を焚べ、その熱が気流によって、二番目の部屋、さらには三番目の部屋へと伝わっていきます。
加えて、二番目・三番目の部屋の側面にも、薪を補完的に焚べるための穴を設けており、各部屋の温度を調整できるようになっています。
部屋ごとに、また同じ部屋の中でも場所ごとに、温度の度合いは様々であり、その温度のグラデーションと、窯の中を舞う自然の釉薬:灰の偶然の付き方によって、画一的ではない、多様な顔を持った陶器が焼き上がることになるのです。

とは言え、窯の中で起きる動きの大きな傾向を予測しながら、目指している焼き上がりの色合いごとに最適であろう場所に陶器を置いていくことも、とても大事です。この大事で難しい工程:窯詰めが、最終準備となります。

<予測と偶然の両方をにらみながらの窯詰め>

4日間の戦い?

ここまでの準備が整い、いよいよ火を入れます。
目指す温度は、なんと!

1,230℃!!

皆さん、想像できますか?
とてつもない高温、その温度にあっという間にたどり着けるわけではありません。また、一気に温度が上がりすぎてしまうと、陶器が壊れるおそれもあります。
そのため、少しずつ少しずつ薪を焚べながら、1時間に約30~50℃ずつ上げていくことを目指します。
刻々と変わる日々の気候や窯の中の状況に向き合いながら、投入する薪の量やタイミングを工夫し、その結果である温度の上がり方をグラフにプロットして管理し続けていく。この作業を連日連夜、夜も徹して、約4日間!
過酷な戦いとも言える時間の始まりです。

<1,230℃への道のり>

宮崎先生1人でこの工程を完遂することは、到底できません。
体験者の中で希望する人はもちろん、宮崎先生の声掛けにより集まった村の人、村外から窯焼きに関心があって来られた人(今年はアメリカからも!)。
薪を焚べる作業をする人、温度の上昇ペースを管理する人、その人達にご飯やお酒を差し入れする人。
コツを教えるベテランの人、試行錯誤しながら初めてチャレンジする人。
老若男女、本当に様々な人が、入れ替わり立ち替わり4日間、登り窯のある建屋に集い続けます。

その様子は、戦いではなく年に一度のお祭りのようでもあり、多様な西粟倉村のあり方そのものを見ているかのように感じます。

<多様さあふれる場>

こうしたみんなの力で、着実に、着実に、温度は上がっていきます。
森林から生まれた薪のエネルギーはどんどん陶器に移り変わり、それに連れて建屋の壁は無くなり、外と一体になっていきます(笑)

<移り変わっていく森林のエネルギー>

3日目に入るころには、二番目・三番目の部屋の温度の調整も始まっていきます。

<徐々に終盤へ>

1,230℃の世界

段々と、薪を焚べるために近づくのも、熱くてやっと、といった感じになってきます。
手袋や服なども、しっかりとした装備で、安全に気をつけながら作業を進めます。
炎の色も様子が変わってきます。

そしてついに1,230℃に達する頃には、その色は、もはや赤ではなく・・・

白!!

見たことのない白い炎を、どうぞ御覧ください!



と言いたかったところなのですが!
ここまでくると、もはや太陽のような光源!なんと、カメラに収めることすらままならない状態になってしまいました。そのリアルさは、ぜひ現地でご体験いただきたいです。

こうした人生で初めて体験する世界を超えて、ついに4日間の道のりも終わりを向かえ、焼き上がりです。

生まれてきた陶器たち

窯の中の温度が下がるのを数日待って、焼き上がった陶器たちを窯から取り出していきます。
”どんな色に仕上がっているかな?壊れていないかな?”
そんな心配もしながら、形作った人たちに思いを馳せながら、1つ1つ丁寧に確認し、ホッと一息。

西粟倉の森林につながるエネルギーや、西粟倉に関わるたくさんの人の協力を得ながら生まれてきた自分だけの陶器が、体験者の手にわたっていきます。

きっと、その方たちひとりひとりの、一生物の陶器となっているはずです。

またこの1年、多くの方たちが陶器を形作り、焼き上げる体験に触れ、西粟倉とつながった自分だけの陶器を手にしてくれますように!

<西粟倉のすべてに感謝!>

若杉窯 ギャラリー若杉

  • 料金:1人あたり、土の形作り・焼成で、2,000円(税込)
    • 土の形作りは、電動ろくろを使う作り方以外にも、様々な作り方を体験可
    • 焼成時の現地訪問は任意
    • 完成品の受取は現地訪問もしくは郵送(着払い)
  • 予約要否:要(事前に必ずお問合せください)
  • お問合せ先:090-4657-8476まで
  • 住所:〒707-0501 岡山県英田郡西粟倉村大茅1640−6
  • SNS:

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